金融デリバティブ - 香港カラフルFP

金融デリバティブ

金融デリバティブは、株式、債券、利率、外貨または株式市場インデックス(指数)といった金融資産によりその価値が決まったり、またはそれから派生した金融運用商品です。金融デリバティブには、オプションや為替予約といった数多くの種類があります。その他の投資に比較して性質的に投機的であり、且つ、構造的にも複雑ですので、金融デリバティブは経験ある専門投資家にしか適しません。

金融デリバティブを利用する

金融デリバティブは、リスクマネジメント、投機または裁定取引(アービトラージ)といった異なる目的に利用することが出来ます。

(a)リスクマネジメント

デリバティブはヘッジの為に広く用いられています。ヘッジの目的は資産価値や投資ポートフォリオに対する市場価格の変動による影響を取り除くことです。

例えば、株式で構成した投資ポートフォリオを有するファンドマネージャーが市場における短期的な下方修正を予想しているとします。ポートフォリオの価値を保護するには、マネージャーは株式指数の先物を売り(ショート)することが出来ます。実際に株式市場が下落した場合、株式市場インデックスの先物の売りから利益を得ることが出来、投資ポートフォリオの損失と相殺することが出来ます。

逆に、もし株式市場が上昇続けた場合、先物から損失を生じ、投資ポートフォリオの評価益と相殺されます。このように、先物契約でヘッジすることで価値が下がるダウンサイドリスクを取り除くことが出来ますが、同時に、価値が上昇する可能性も放棄することとなります。

(b)投機

投機家は当初の価格よりも良い価格でポジションを手仕舞いすることで利益を得ることだけを目的にデリバティブを売買します。

例えば、恒生ハンセン指数が下がると予測するトレーダーは、ハンセン指数先物をショートするでしょう。予想通り、ハンセン指数が下がれば、そのトレーダーは先の価格よりも低い値段で先物を買戻し利益を得ることが出来ます。

一方、もし予想が間違っており、ハンセン指数が上がれば、損失を被るという結果になります。

投機家は市場における過剰な変動性を作り出しているとしてしばしば非難されることがあります。これは市場に流動性をもたらし貢献しているという点から見ると不公平な非難であるのかもしれません。

(c)裁定取引(アービトラージ)

裁定取引とは、間違った価格付けによるリスク無しの利益を得る為に、異なる市場にて同じ資産、または類似の資産を購入し、そして、同時に売却することです。

金融デリバティブの価値は元となる資産により、元となる資産とそのデリバティブの価格の間に関係性があります。しかしながら、異なる需要と供給によって2つの市場は動いており、時折、その関係性が破綻することがあります。これは裁定取引を行う者にとって、利益を生み出す好機となり、安く値付けされている資産(例:株式)の買いと高く値付けされている資産(例:指数)の売りを同時に行います。

例えば、ハンセン指数先物が300ポイントほどハンセン指数の現物よりも高いとします。投資マネージャーはハンセン指数先物を売って、現物を買い戻すことが出来ます。ハンセン指数先物の決済日において、先物と現物の両者の市場は収斂し、リスク無しの利益がもたらされます。

幅広い種類の財務デリバティブ商品があり、それらの構造は高く複雑であることがあります。ここではもっと基本的な種類のデリバティブに絞り、次の主要な2つの財務デリバティブについて見ていきます。

1.予約取引と先物取引
2.オプションとワラント

予約取引と先物取引

予約取引

予約取引は売り手と買い手の2者間の合意で、特定の将来の期日における資産の受け渡し価格を、事前に決めておくものです。受け渡しの対象となる資産には、株式、債券、利率、外貨、商品コモディティ、株式指数などが含まれます。

先物取引

先物取引とは標準化された予約取引で、先物市場と呼ばれる組織運営された市場において取引されます。先物取引は数多くの資産を対象にしており、その対象資産は農業品、鉱業品、利付き資産、外貨や株式市場指数といったものが含まれます。先物取引は相殺、現物渡しや差金決済のいづれかの方法で決済されます。

株式市場指数先物

株式市場指数先物は特定の株式市場指数 (例:ダウ・ジョーンズ工業株価平均/DJIA、S&P500種株価指数/S&P500、ハンセン指数/HSI) をベースにしており、これらの指数は株式市場の値動き全体を計測するように構成されています。

株式市場指数先物の取引とは、取引日に合意した価格で特定の将来の期日に、指数に含まれる全ての株式の仮想ポートフィリオを売買する旨の標準化された契約を伴います。

現物引渡しが可能な資産を対象とする先物取引の場合、買い手は資産の受取りに同意し、引渡日に代金支払いを行います。そして、売り手は同時に資産の引渡を行います。

しかし、株式指数先物は指数に含まれている株式の引渡しを実際に行うことなく、現金で決済が行われます。株式指数先物の取引から発生する損益は元々の契約価格と最終の決済価格との差により決まります。

例えば、ある投資家がハンセン指数先物を16,500で購入し、最終の決済価格が17,000だったとします。すると、その投資家は25,000香港ドルの利益を得ることになります。
※ (17,000 – 16,500) x HKD 50 = HKD 25,000 (ハンセン指数先物において1ポイント50香港ドルの価値となっています)

香港では、ハンセン指数先物がHong Kong Futures Exchange Limited/HKFE (香港期貨交易所有限公司/期交所)で取引されています。

ハンセン指数先物には、標準のハンセン株価指数先物とミニ・ハンセン株価指数先物の2種類があります。

標準のハンセン株価指数先物の価値は、指数1ポイントにつき、50香港ドルとなっています。ミニ・ハンセン株価指数先物では指数1ポイントにつき、10香港ドルとなっています。つまり、指数を17,000にて取引した場合、各々の価値は850,000香港ドル(HKD50x17,000)と170,000香港ドル(HKD10x17,000)になります。

先物契約の買い手と売り手は、市場インデックスにて計測される株式市場の全体の動きに晒されます。先物取引の原資産となっている株式現物の投資家は購入にあたり、その全額を2営業日以内に支払う必要があります。一方、先物契約の買い手、売り手は契約価額の数パーセントであるマージンのみを支払うだけです。

マージンの要求水準は、マーケットや投資商品の種類によって異なり、市場の状況にも左右されます。(現時点でハンセン株価指数先物契約に必要な初期マージンは90,500香港ドルで、契約価額の10%となっています。) このように、現物への投資で値動きから得る利益(損失)に比べ、指数取引ではより僅かな資本を使って、同じ大きさの利益(損失)を得る取引を可能となっています。

先物取引によるレバレッジ効果は逆効果をもたらすことも指摘しておく必要もあります。株式市場が投資家の予想に反して10%動いた場合、先物契約に投資した資金はすべて無くなってしまいます。

オプションとワラント

オプション

オプション契約はその保有者に、特定数量の対象資産を合意した価格で特定期日以内、または、期日に売却、または購入する権利を与えるものです。しかし、それはあくまでも権利であって、義務ではありません。

オプションの権利を得るには、オプションの買い手(保有者)が売り手(引受人)に対して、決められた手数料(プレミアム)を支払います。

オプションの権利行使においては、保有者が権利を実行し、2者がオプション契約で取り決められた取引を行います。もし、保有者がオプション行使を選んだ場合、引受人はその取引を遂行する義務を負っています。

異なる資産を対象とする様々なオプションが取引されています。その対象資産には株式(ストックオプションやワラント)、株価指数、債券(コーラブル・ボンドとプッタブル・ボンド)、外貨(通貨オプション)、利率、商品コモディティなどがあります。

コールオプションは対象資産を購入する権利を保有者に与えます。(義務ではありません)プットオプションは対象資産を売却する権利を保有者に与えます。(これも義務ではありません)

コールオプションの保有者が対象資産を購入、またはプットオプションの保有者が対象資産を売却する事前に取り決められた価格は行使価格と呼ばれます。行使価格はオプション契約の交渉時に確定されます。

オプション契約には時間の制約があります。権利行使できる日(最終日)は行使日または満期日と呼ばれます。オプションの形式には2種類あり、ヨーロピアン・オプションとアメリカン・オプションという名前です。ヨーロピアン・オプションは満期日にのみ行使が可能となっています。一方、アメリカン・オプションは満期日までの期間であれば、いつでも権利行使することが出来ます。

オプションは店頭取引や取引所を通して、売買することが出来ます。オプション取引は取引所において、標準的な契約に基づいて行われます。取引所では、全ての取引を管理し、全てのオプション引受人に対して買い手となり、また、全てのオプション買い手にとっての売り手となる決済会社がサービスを提供しています。

オプション引受人はその取引義務を遂行できることを確実にする為に、保証金を拠出することが求められます。保証金の金額と形式については、個々のオプション契約により異なります。

ワラント

ワラントはストック・オプションと同様な動きをします。香港において、多くのワラントはコール・ワラントで、プット・ワラントは僅かです。ワラントには2種類有り、イクイティ・ワラントとデリバティブ・ワラントとあります。

イクイティ・ワラントは対象資産である株式を発行する企業が発行するもので、デリバティブ・ワラントは金融機関といった第3者により発行されるものです。

非対称的な損益

オプションとワラントの特徴は損益が非対称となっていることです。

投資家が長江実業(0001.hk)が上昇相場であると見ているとします。そして、その投資家は85香港ドルの行使価格で、長江実業の株式を1,000株購入出来るコール・オプションを6,000香港ドルのプレミアムを支払って購入し、満期まで保有したとします。

オプション満期日における長江実業の株価が85香港ドルより下である場合、オプションは行使する価値はなく、投資家は支払った6,000香港ドルのプレミアムだけの損失を受けるだけです。いくら長江実業の株価が下がっても、最大の損失額は6,000香港ドルです。

一方、長江実業の株価が100香港ドルまで上がったとします。投資家は15,000香港ドル((HKD100-HKD85)x1,000)をオプションの権利行使を行って得ることが出来ます。プレミアムとして支払った6,000香港ドルを差し引いて、純利益は9,000香港ドルとなります。この場合、行使日における長江実業の株価が上がれば上がっている程、利益が大きくなります。

このようにオプション購入者の最大損失は支払ったプレミアムに限定され、利益は理論上では無制限となっています。しかしながら、オプション引受人の損益は正反対となり、利益は受け取るプレミアムの金額に限定されますが、損失は無制限となっています。

デリバティブの長所

デリバティブの良い点は以下の通りです。

  • 好ましくないリスクに対するヘッジ方法を提供
  • 投機目的には効率的な手段となる
  • 支払ったプレミアムに限定される損失(オプション購入者)
  • 高いレバレッジ効果
  • 高いリターンの可能性
  • 流動性(取引所で取引されるデリバティブ)
  • 低い取引コスト

デリバティブの短所

こういった点がテリバティブの悪い点となります。

  • 極めて高いリスク
  • 無制限の損失(オプション引受人と先物取引者)
  • 多額のプレミアム(オプション購入者)
  • 満期日後の損失(支払ったプレミアム)
  • 対象資産の所有権や配当がない

これらの金融商品は複雑であり、特有のリスクを抱えており、万人向けのものではありません。デリバティブの取引前に、投資家はその商品の特質と関連するリスクを十分理解しておく必要があります。